MiniMaxの公式リポジトリで、MiniMax H3のプロンプト作成を自動化する「スキル」が配布されました。
AIエージェントにH3向けプロンプトの書式を覚えさせる公式Agent Skillです。
H3のプロンプトは[Shot 1]や(S1)、<d>タグといった独特の記法を使うため、慣れるまでは正直かなりとっつきにくいものです。今回配布されたスキルを導入すると、この記法を一切覚えないまま、普通の日本語で伝えるだけで正しい形式のプロンプトが出てくるようになります。
この記事では、スキルとは何かという基本から、無料で始められるCodexでの導入手順、そして仕組みの中身までをまとめます。
リポジトリはこちらです。

目次
1. そもそもスキルとは何か
スキルを一言でいうと、AIに読ませる作業指示書です。
普段AIに何か頼むとき、毎回「この形式で書いてね」と説明を貼り付けている方も多いと思います。スキルはその説明書をファイルとして一度インストールしておき、必要になったときにAIが自分で読みに行く仕組みです。
重要なのは、毎回貼る必要がないという点です。一度入れておけば、以降は普通に日本語で頼むだけで、AIが「これはH3のプロンプト作成だな」と判断して自動的に指示書を読み込みます。
この仕組みはClaude発のSKILL.mdという規格ですが、現在はOpenAIのCodexをはじめ多くのAIエージェントが対応しており、事実上の共通規格になりつつあります。OpenAI自身も公式のスキルカタログを運営しています。
つまり、一度作られたスキルは複数のAIツールで使い回せるということです。今回のMiniMax公式スキルも、Claude CodeでもCodexでも同じように動きます。
2. H3のプロンプトが難しい理由
H3のプロンプトは、通常の画像生成AIのように文章を並べるだけでは本来の性能を引き出せません。3つのフィールドに分けて書く決まりになっています。
| フィールド | 書く内容 |
|---|---|
integrated_multimodal_description | 映像・動き・カメラワーク・セリフ |
overall_soundscape | 環境音や物理的な音 |
non_diegetic_music | 登場人物には聞こえないBGM |
さらに本文の中では、こういったタグを使い分けます。
[Shot 1][Shot 2] At 00:03.500,— カットの区切りと切り替え時刻(S1)(S2)(S1,S2)— 話者を識別する固定ID<d>[Japanese] セリフ本文</d>— セリフを囲むタグと言語指定
一度覚えてしまえば理にかなった構造なのですが、初見でこれを手書きするのは相当な負担です。ここを肩代わりしてくれるのが今回のスキルです。
なお、セリフは元の言語のまま書く仕様です。公式ガイドにも次のように明記されています。
Write rewrite sections in English; preserve dialogue, lyrics, and visible scene text in their original language.
地の文(状況説明やカメラワーク)は英語で書きますが、セリフ部分は日本語をそのまま書けばよく、ローマ字に直す必要はありません。H3の日本語発音が優秀な理由のひとつがここにあります。
3. 導入する(エージェントに頼むだけ)
この記事はタグ記法を覚えなくて済むという話なので、導入でコマンドを覚えるのも本末転倒です。結論から言うと、AIエージェントを使っているならコマンドを打つ必要はありません。
CodexやClaude Codeにこう頼むだけです。
MiniMax-H3のh3-prompt-writing のスキルをインストールして
エージェントが自分でインストールコマンドを組み立てて実行してくれます。コマンドを覚える必要も、打ち間違える心配もありません。
このリポジトリには全部で9つのスキルが入っています。この記事の主役であるh3-prompt-writingと、後述する用途別スキル8種です。
https://github.com/MiniMax-AI/MiniMax-H3 のスキルを全部インストールして
スキル名を指定して1つだけ入れることもできますが、選んで入れる意味はほとんどありません。スキルの実体はテキストファイル数個で、モデルファイルのようにディスクを圧迫しないからです。しかも後述するように、使うときにだけ読み込まれる設計なので、入れておくだけならコンテキストも消費しません。
商品広告っぽいのを作りたい」と伝えれば、エージェントが該当するスキルを自分で見つけて使ってくれます。入れていなければ、そのスキルが存在することにすら気づけません。
無料枠から始められるCodexでも同じです。AIエージェントを触るのが初めての方は、Codexでこの一文を投げるところから始めるのが一番手軽だと思います。
覚えておく点は2つだけ
入れた後はセッションを開き直してください。 スキルは起動時に読み込まれるため、インストール直後は認識されないことがあります。
全プロジェクトで使えるようにする
ここが地味につまずきやすいポイントです。スキルには2つのインストール先があります。
| スコープ | 有効範囲 |
|---|---|
| グローバル(ユーザー単位) | すべてのプロジェクトで使える |
| プロジェクト単位 | そのプロジェクトのみ |
インストール時に確認されますが、プロジェクトフォルダの中で作業していると、プロジェクト単位で入ることがあります。すると別のプロジェクトを作ったときに、入れたはずのスキルが読まれない状態になります。
厄介なのは、この状態でもエラーが出ないことです。エージェントは「そんなスキルは知りません」と答えるか、もっと困ることに、それらしいプロンプトを勝手に作ってきます。H3の記法を知らないまま一般的な動画生成プロンプトの書き方で出力してくるので、一見それらしく見えてしまい、生成してみるまで気づけません。
MiniMax-H3のh3-prompt-writing のスキルをグローバルにインストールして
https://github.com/MiniMax-AI/MiniMax-H3 のスキルを全部グローバルにインストールして
動画制作のたびに新しいフォルダを作る使い方であれば、最初からグローバルに入れておくのが安全です。「グローバルに」と入れているのはこのためです。
インストール後の確認
スキルは~/.agents/skills/という共通の場所に置かれ、そこから各エージェントに向けてリンクが張られます。Claude Code専用のフォルダではないため、1回入れれば普段使っているエージェントすべてで使えます。
Antigravity、Claude Code、Codex、Gemini CLI、GitHub Copilotの5つに配られています。エージェントを指定しなければ、環境内で見つかったものすべてが対象になります。普段Claude Codeを使っていて、たまにCodexやAntigravityを開くような場合でも、入れ直す必要はありません。
なお、インストール時にはSocketとSnykによるセキュリティスキャンの結果も表示されます。スキルはエージェントの全権限で動くため、公式リポジトリのものであっても目を通しておくと安心です。
4. 実際に使ってみる
導入したら、あとは普通の日本語で頼むだけです。試しにかなり雑な指示を投げてみます。
入力(思いついた順に書いただけの日本語)
桜が散る公園のベンチで、女子高生が2人並んで座ってる動画を10秒くらいで作りたい。
1人が「もう卒業だね」って言って、もう1人が「うん、あっという間だったね」って返す感じ。
最後に2人で笑って空を見上げる。
カメラは最初は引きで、途中から顔に寄ってほしい。
実写っぽくシネマティックに。BGMは静かなピアノで。最後は少し余韻を残したい。
出力(スキルが清書したH3プロンプト)
integrated_multimodal_description: [Shot 1] Live-action, cinematic, a wide shot frames two high-school girls in school uniforms sitting side by side on a park bench, cherry blossom petals drifting down around them in soft afternoon light. The camera pushes in with small amplitude at slow speed as the girl on the left, with a quiet, slightly wistful voice (S1), turns her head toward her friend and says: <d>[Japanese] もう卒業だね。</d> [Shot 2] At 00:03.500, the camera cuts to a medium close-up of the girl on the right, petals settling on her shoulder. The girl on the right, with a soft, warm voice (S2), lowers her gaze for a moment and answers: <d>[Japanese] うん、あっという間だったね。</d> [Shot 3] At 00:06.000, the camera cuts to a low-angle two-shot from the front. Both girls break into a small laugh, then tilt their heads back to look up at the sky as petals fall past the frame.
overall_soundscape: A gentle breeze moves through the cherry trees throughout the scene, with fabric rustling as the girls shift on the bench. Distant park ambience and faint birdsong continue underneath, and both girls let out a short quiet laugh near the end.
non_diegetic_music: A solo piano at a slow tempo playing sparse single notes, gradually joined by a sustained low string line that fades out over the final second.
どこが変換されたか
| 元の日本語 | 清書後 |
|---|---|
| 「10秒くらい」 | At 00:03.500 At 00:06.000 と実時間に配分 |
| 「1人が」「もう1人が」 | (S1) (S2) の固定IDと声質の描写 |
| 「〜って言って」 | <d>[Japanese] もう卒業だね。</d> |
| 「最初は引きで途中から顔に寄って」 | wide shot → pushes in with small amplitude at slow speed → medium close-up |
| 「BGMは静かなピアノ」 | non_diegetic_musicに分離し、楽器・テンポ・音量変化で記述 |
| (指定なし) | overall_soundscapeに風・衣擦れ・鳥の声を補完 |
最後の行に注目してください。指定していない環境音をスキルが補完しています。カメラワークについても、「寄って」という曖昧な指示を「振幅は小さく、速度はゆっくり」という公式ガイド準拠の記法に変換しています。
BGMについても、「静かなピアノ」という一言が楽器編成・テンポ・音量変化にまで具体化されました。
A solo piano at a slow tempo playing sparse single notes, gradually joined by a sustained low string line that fades out over the final second.
公式ガイドではnon_diegetic_musicに「切ない」「感動的」といった抽象的な感情語を使わず、楽器・速度・強弱の変化で書くよう定められています。指示になかった弦楽器の追加やフェードアウトのタイミングまで補われているのは、この規則に沿った結果です。
あとはこの出力をそのままComfyUIのプロンプト欄に貼るだけです。
5. 中身を理解する
ここからは、スキルがどう動いているかの解説です。仕組みを知っておくと、自分でスキルを作るときの参考になります。
ディレクトリ構成
h3-prompt-writing/
├── SKILL.md 手順書。約45行
├── references/
│ ├── base-en.txt T2VA/I2VA/FL2VA/L2VA の詳細仕様(実体)
│ └── ref-en.txt Ref2VA の詳細仕様(実体)
└── agents/
└── openai.yaml OpenAI系エージェント向けの表示設定
役割で言えば、SKILL.mdが目次、references/が本文、agents/openai.yamlが他社エージェント用のラベルという3層構造です。
起動条件はfrontmatterに書かれている
SKILL.mdの冒頭には、次のYAMLが置かれています。
name: h3-prompt-writing
description: Write MiniMax H3 video generation prompts for T2VA, I2VA, FL2VA, L2VA, and Ref2VA. Use when rewriting multimodal requests into H3 prompt structures, composing integrated_multimodal_description, overall_soundscape, and non_diegetic_music, aligning keyframes, or defining reference labels for images, videos, and audio.
このdescriptionの「Use when 〜」以降が起動条件です。AIは普段この1行だけを保持しており、ユーザーの依頼内容がこの条件に合致したときに初めてSKILL.md本体を読み込みます。
段階的に読み込む設計
| 段階 | 読まれるもの | 分量 |
|---|---|---|
| 常時 | frontmatterのdescriptionのみ | 数行 |
| H3のプロンプト作成を頼まれたとき | SKILL.md本体 | 約45行 |
| 実際に書き始めるとき | references/base-en.txt | 全文 |
これがコピペ方式との決定的な違いです。コピペは毎回ガイド全文をコンテキストに載せてしまいますが、スキルなら必要になるまで読み込まれません。仕様書が数千文字あっても、普段のコンテキスト消費はほぼゼロで済みます。
モード判定も自動
MiniMax H3には入力形式に応じた5つのモードがあります。
| モード | 入力 |
|---|---|
| T2VA | テキストのみ |
| I2VA | 最初のフレーム画像 |
| FL2VA | 最初と最後のフレーム画像 |
| L2VA | 最後のフレーム画像 |
| Ref2VA | 複数の参照画像・動画・音声 |
スキルはこの判定も引き受けます。画像を1枚渡せばI2VA、参照素材を複数渡せばRef2VAの6セクション構成(subject_definitions、summary、retention_analysis、detailed_description、overall_soundscape、non_diegetic_music)で出力してくれます。
特にRef2VAは<Picture 1>や<Audio 1>といった参照ラベルを本文中で正確に対応させる必要があり、手書きの難易度が跳ね上がる部分です。ここを任せられるメリットは大きいと思います。
agents/openai.yaml の中身
interface:
display_name: "MiniMax H3 Prompt Writing"
short_description: "Write H3 base and full-reference video prompts"
default_prompt: "Use $h3-prompt-writing to rewrite this multimodal request into a MiniMax H3 generation prompt."
OpenAI系エージェント向けのUI設定です。プロンプト仕様そのものは入っておらず、表示名と呼び出し文だけが定義されています。対応環境では$h3-prompt-writingという記法で明示的に起動できます。
MiniMaxが特定のAIツールに限定せず配布しようとしていることが、このファイルから読み取れます。
6. 用途別スキル8種
h3-prompt-writing以外に、スタイル特化型のスキルも8種類公開されています。
| スキル名 | 用途 |
|---|---|
minimalist-product-ad-generator | ミニマルな商品広告 |
brand-promo-video-generator | ブランドPR動画 |
3d-animation-short-generator | 3Dアニメーション短編 |
papercraft-stop-motion-explainer | ペーパークラフト風ストップモーション解説 |
paper-collage-explainer-generator | ペーパーコラージュ風解説 |
handdrawn-live-video-generator | 手描き風 |
music-video-subtitle-generator | MV・歌詞タイポグラフィ |
co-op-game-intro-generator | 協力ゲーム風イントロ |
個別に入れる場合も、エージェントにスキル名を伝えるだけです。
MiniMax-H3のminimalist-product-ad-generatorスキルを入れて
商品紹介やMV制作など、作りたいものが決まっている場合はこちらを併用すると、演出の方向性まで含めて提案してくれます。
7. Skill生成サンプル
co-op-game-intro-generator
paper-collage-explainer-generator

